「10年ぐらい絶版状態で、古本屋さんで探したら買えるけど読めないという状態が続いた。少女漫画家のレジェンドたちが『夏への扉』をすごい褒めて、岩館真理子先生は『私が一番好きなのはオールタイムで夏への扉』。これが『幻の名作』と呼ばれる理由。 第1章冒頭『6週間戦争の始まる少し前、僕と猫のピートはコネチカット州の古ぼけた農家に住んでいた』——『6週間戦争』というキーワードだけで核戦争を連想させる。続いて『マンハッタンの被爆地帯の端にあった古い農家』、たった3行でマンハッタンが核攻撃で消えたのが分かる。SFの読み方は、作者が説明せずキーワードを並べて読者に推理させる『共犯関係』。 古い農家には扉が11個あって、猫のピートは雪を見ると『この扉は冬につながってる』と次の扉、また次の扉と、人間用の11個の扉を順番に試させる。『夏への扉を探すのは決して諦めない』——本作のテーマ。 第1章はネコ好きおじさんが猫にデレデレ語るエピソードだけで進むんだけど、ラストでは『夏への扉』が完全に逆の素晴らしい意味を持ってくる——『未来は絶対に素晴らしい、自分の未来に絶望することは間違っている。真冬の子猫ですら夏への扉を探すのは諦めないし、もし夏への扉が見つからなかったらその時は二度寝すればいい、起きたらまた夏への扉を探せばいい』というポジティブな超メッセージ。 日本だけで大ヒットした理由はこのタイトル『夏への扉』。原題 The Door into Summer は詩情あふれるイメージじゃないけど、日本語に直して『夏への扉』と言った瞬間に超かっこいい詩情語になる——読んでいる最中も『この話は絶対にハッピーエンドにたどり着く』という安心感が半端ない。」
– 出典: YouTube『岡田斗司夫ゼミ』夏への扉 解説(00:00〜)